紙の定義と特性

紙の定義

日本工業規格では、紙は「植物繊維そのほかの繊維を絡み合わせ、膠着させて製造したもので、広義には素材として合成分子を用い製造した合成紙をも含む」とされている。

紙は、強度と剛度により紙と板紙とに分けられ、紙は和紙を洋紙に、板紙は紙器用板紙を段ボール原紙に分けられる。しかし、その区分は明確ではなく、慣習上、坪量120~130/㎡程度が紙と板紙の境界と見なしている。アメリカでは0.3mm厚以上が板紙とされている。

洋紙が文化用紙といわれ、新聞用紙、印刷・情報用紙、包装用紙などに使用される。

板紙は産業用紙といわれ、紙器、紙管、段ボールなどの包装容器に使用される。日本工業規格では、板紙は「木材化学パルプ、砕木パルプ、わらパルプ、古紙などを配合した厚い紙の総称」である。わが国の紙器用板紙は、7~9層の多層抄きが主流である。表面の色やコーティングの有無によって層間構成が異なり、表面は美観性と印刷適正の関係で化学パルプが用いられ、裏面は美観性に応じ化学パルプから脱墨古紙や古紙まで幅広く使用されている。中間層はほとんどが古紙が使用されている。


紙の特性

紙を抄紙するときの条件によって紙の特性が変わるが、抄紙の方法に基因する特性は主に4つある。

一つ目は、縦目と横目。紙抄紙時に繊維が流れる縦方向に方向性を持ち、列びやすいため縦と横方向との特性が異なり、縦目と横目を間違えると重大な欠点になる。日本工業規格では「縦方向は、抄紙機で紙を抄造する場合、紙の進行方向と同じ紙の方向で、一般に繊維はこの方向に多く配向していて、略称はMDという」となる。「横方向は、抄紙機で紙を抄造する場合、紙の進行方向と直角な方向であり、略称はCDという」となる。縦目と横目の識別は、破いた時に引き裂き易い方法が縦方向で、水に濡らすとカールする軸方向が横方向である。紙製品は、長手方向に縦目を配し、クロス方向に横目を配すのが一般的で、紙器や段ボールなど剛度を要求される製品では、紙目を間違えると胴膨れや積重ね強度が低下し荷崩れを起こす致命的な欠陥になる。

二つ目は、紙の表裏。紙は製造工程でパルプの分散液を所定の量目だけ金網上に乗せて紙層を作る。抄紙機フェルトに接した面を表、ワイヤーに接した面を裏と呼ぶ。表は微細繊維や填料を多く含み、裏はワイヤーマークが残る。日本工業規格では表を「紙の滑らかな面で、一般には抄紙時にワイヤに接する面の反対側である」といい、裏は「紙の粗い面で、一般には抄紙時にワイヤに接する面である」となる。

三つ目は、地合。日本工業規格によると地合とは、紙の繊維の分散状態。よい地合は紙質が均一で、平滑性が良く、外観上美麗な印刷効果が得られる。地合のよい紙は、パルプの種類、配合、叩解度、原料濃度、機械的条件により決まる。地合の識別は、透過光をあて透かし、明暗により感覚的に判断される。

四つ目は、層間剥離。円網式で抄造する板紙に発生しやすい特性で、各々の層間接着が不完全の時に生じる。表面強さのピッキング状態を測定するにはデニソンワックス方法を用いる。